住宅用の土地を探す際は、注意点とか後悔ポイントだとかをWebで調べる方が多いかと思います。実際私もそうでしたし、ものすごく時間をかけて下調べをしたつもりでした。ですが、注文住宅の設計から工事期間中にかけて、これまで見落としていた重要なポイントに気づくことがありました。ここでは、その重要なポイントを「ネットにあまり書かれていない注意点」としてまとめてみたいと思います。
【追記】
この記事を公開した直後に、私の土地から地中埋設物が見つかりました。建物の新築工事中でしたが、先行外構工事にて土を掘った際に、地表から40cmほどの深さに井戸が出てきました。土地の売買契約では地中埋設物は「発見していない」とされていましたが、掘ってみてわかったという感じです。撤去費用等を売主に請求した顛末も記そうかと思います。(現在対応中なので今後追記していく予定)
想定読者
- 住宅用の土地を探している人
- 地中埋設物が見つかった際の経験談を読みたい人
ご注意
私は不動産の専門家でもなければ法律の専門家でもないので、想像や妄想が多分に含まれています。
土地探しの注意点1 隣地との共有塀や越境物を確認する
私の土地は、隣地との境界10メートルほどに渡って、高さ1メートル強のブロック塀がありました。このブロック塀はかなり老朽化しており、手で押しても倒れそうなほどでした。また、見た目にも非常に汚いものでした。
土地契約の前日まで、このブロック塀は私の購入予定の土地にたっているもので、特別面倒な調整をすることなく撤去・新設できるものと勘違いしておりました。しかしながら、重要事項説明書には、このブロック塀が隣地との境界線上にたっており、所有権が双方にある共有塀であると小さく書かれていました。不動産屋からも注意点として言われていなかったのもあり、気づくのが遅れてしまいました。そこからは、如何にして共有塀を撤去するか頑張ってググりました。で、おそらくポイントは2つです。
- 他の所有者に撤去の了承をもらう
- 言い出しっぺが撤去(新設)費用を出す
私の場合、撤去(新設)費用はなんとかなりそうだったので、隣地の方に撤去の了承をもらうことだけが課題としてのこりました。ただ、隣地の方にはあったこともなく、どんな方か想像もつかないので、共有塀の撤去について了承いただけないリスクがありました。せっかく家を建てたのに、いつ倒壊してもおかしくない、そしてみすぼらしいブロック塀を毎日眺めるのは絶対に避けたかったので、私は土地の契約書に以下の特約を付けてもらうことにしました。
- 隣地の方に共有塀の撤去について了承してもらうこと(土地の所有権が移る場合は継承すること)
- 了承してもらえない場合は違約金等なしで契約解除できること
最終的には、無事隣地の方から了承をいただき、書面でそれを残すことができました。そのおかげか、後日隣地の方と撤去作業の調整を行う際もスムーズに進んだと思います。
このようにめんどくさいことを土地契約の前後でやったわけですが、今になって思えば、土地の価格が多少上がっても良いので、前所有者に共有塀の撤去・新設をやってもらってから、もしくはやってもらうことを確約してもらい契約すれば良かったと感じました。実際にこれができるかどうかはわかりませんが、前所有者が個人ではなく不動産業者であればできないなんてことはないんじゃないかと想像します。
土地探しの注意点2 給排水工事にかかる費用を確認する
家を建てる際、給排水工事にかかる費用は結構大きいです。私が契約したハウスメーカーだと、安い方で40~50万円、そこそこかかってるなという方で100~300万円、中にはレアケースですが1000万円ほどかかった方もいるようです(私調べ:ブログを漁った)。どうやらこの費用は、建物から水道管までの距離等々によって変わるらしいです。正直、土地を契約するまで給排水工事にかかる費用なんて全く気にしていませんでしたが、この費用インパクトからするに、事前に下調べしておいて損はないかと思います。
土地探し中の方は、事前に給排水工事にかかる概算費用を知りたい旨を不動産屋に伝えれば、少なくとも参考情報(建物から水道管までの距離や水道管敷設の障害となるものの有無)くらいは出してくれるんじゃないかなと思います。
土地探しの注意点3 土地の埋設物(ガラ)がよく出るエリアかどうか確認する
工事の妨げになるような埋設物があった場合、誰の責任においてそれを撤去するのか、というのは土地の契約書に記載されているかと思います。一方、埋設物が出ないに越したことはないはずです。撤去によって工事がストップしたり、場合によっては前所有者の負担で埋設物を撤去できる期間が終わってしまっているかもしれません。
ここからは、私が新築工事の現場監督に聞いた話であり、何からのデータとして公開されているわけでもありませんが、どうやら数十年前に大規模なインフラ工事を行った地域周辺からは大量のガラが出ることが多いそうです。当時は多少のゴミなら適当にそこらへんの土地に捨てていたようで(別に罰せられることもない)、それがごっそり地中に埋まっているとのことでした。また、コンクリートや瓦などのガラならまだしも、化学物質や油等による土壌汚染が判明し、住居やその他の用途としても土地を使用できないような最悪のケースもあるようです。
ということで、ここではエリアという切り口で埋設物が出てこないような土地探しについて書いてみましたが、その他の観点もたくさんあると思いますので、仲介業者などから知恵を借りつつリスクの低い土地を選定することが重要かなと思います。
また、そのリスクを完全になくすことは無理かと思いますので、それに備えて土地の契約内容は買主負担を極力減らすようなものとすべきです。弁護士ドットコムの事例を眺めていると、「埋設物が見つかった場合の撤去費用等は買主負担」「契約不適合責任を追求できる期間が終わってしまった」という具合で苦戦している方が多いようです。このような事例を参考にし、契約内容を見返すことができればベターと考えます。
地中埋設物(井戸)が見つかった話
冒頭にも書きましたが、私の土地から地中埋設物が見つかりました。新築工事の序盤、先行外構工事にて土を掘った際に、地表から40cmほどの深さに井戸が出てきました。土地の売買契約では地中埋設物は「発見していない」となっており、気にも留めていませんでしたので、まさかという感じです。ただ、工事が止まってしまっているので、サクッと対処して工事を再開してもらわないと困ります。いろいろ調べた結果、やらないといけないことはこんな感じでした。
- 土地の売主へ埋設物が見つかったことを報告
- 土地の売主と費用負担について合意
- お祓い(井戸の撤去の場合は実施することが多いらしい)
- 埋設物撤去
- 地盤改良工事(必要な場合)
まず、土地の売主へ埋設物が見つかったことを報告する必要がありますが、特に土地の引き渡しから日数が経過している場合は、契約不適合責任を追求できる期間内かどうかが怪しくなってきますので要注意です。私の場合は売主が宅建業者であり、引き渡しから2年間は契約不適合責任を追求できる契約となっていたため多少余裕がありました。なので、売主へ報告することよりも前に、埋設物撤去その他諸々の費用をどこまで請求できるのか、どのようにアプローチしたらいいのかをプロに聞こうと思いました。私が暴走して売主との話がこじれてしまうのも嫌だったので。
私が知りたかったのは以下のとおりです。
- 売主に費用が請求できるのはどれか
- 埋設物(井戸)の撤去費用
- 埋設物(井戸)の撤去前に行うお祓い費用
- 調査会社により地盤改良が必要と判断された場合の工事費用
- 調査会社により地盤改良が必要と判断されなかった場合に施主の希望で実施する工事費用
- 工期が遅延したことによる家賃等の費用
- 土地売買価格の減額
- 売主とはどのように話を進めるべきか(弁護士に対応を依頼すべきか)
上記をもって様々な窓口に問い合わせてみました。
- 不動産問題・不動産トラブル訴訟相談サポート事務局
Webで問い合わせた翌日の朝6時位に弁護士より電話がかかってきました。無愛想な感じでしたが、問い合わせ時に記載していた質問事項については回答がもらえました。 - 不動産あんしん相談室
メールにて宅地建物取引士から質問についての回答をもらうことができました。 - 宅地建物取引業協会の無料相談
弁護士による無料相談が可能とのことでしたが、予約できる日時がかなり先になってしまうため断念しました。 - ココナラ法律相談
3名にメールで問い合わせをしました。翌日に1名から回答をもらいましたが、他2名からは返信がありませんでした。 - 弁護士ドットコム
有料(月額300円)ですが、不動産含めた各種法律相談についの弁護士の回答を見ることができます。相談件数も豊富なので、似たような事例はおそらく見つかると思います。私の場合は、関連しそうな事例を60件ほど読んで、すぐに有料会員を退会しました。
これらから得られた回答をまとめると、大体こんな感じでした。要は、家を建てるにあたり障害となるものを取り除くにかかる費用は請求できるという、その土地の主たる取得目的が達せられるかどうかだけが判断基準みたいです。
- 売主に費用が請求できるのはどれか
- 埋設物(井戸)の撤去費用
- 請求できる。埋設物があると家が建てられないため。
- 埋設物(井戸)の撤去前に行うお祓い費用
- 請求できない。信仰などに依る部分が大きく、またお祓いをやらなかったとしても家は建てられるため。
- 調査会社により地盤改良が必要と判断された場合の工事費用
- 請求できる。地盤改良しないと家が建てられないため。
- 調査会社により地盤改良が必要と判断されなかった場合に施主の希望で実施する工事費用
- 請求できない。地盤改良しなくとも家が建てられるため。
- 工期が遅延したことによる家賃等の費用
- 微妙。交渉次第か。
- 土地売買価格の減額
- 請求できない。おそらくは、埋設物があったとしても、埋設物撤去と地盤改良等の必要な対応をやれば、もとから埋設物がなかった場合とほぼ同等の評価となる、という考え方だと思う。個人的には何となく解せない部分あり。
- 埋設物(井戸)の撤去費用
- 売主とはどのように話を進めるべきか(弁護士に対応を依頼すべきか)
- 弁護士がいなくても話は進められると思う。が、困ったら対応を依頼すべき。
ということで私は、弁護士はたてずに、自身で売主と話を進めることとしました。その際に要求する費用は、上で「請求できる」と記載したものです。
事の顛末を時系列で整理
ハウスメーカーの施工担当者より井戸が見つかったとの連絡を受ける
電話で連絡を受けました。想定外の出来事だったので、工期の遅れや費用負担などをあれこれ悩み始めたのがこのタイミングです。
ハウスメーカーの施工担当者と私で現地確認
井戸が見つかった連絡を受けた数日後、施工担当者に現地確認のアテンドを依頼しました。当日は、井戸を確認して写真を何枚か撮って終わりました。売主との話の進め方について悩んでいること、撤去の段取りを少し待ってほしいことを施工担当者には伝えておきました。なお、この時点で地盤改良工事が必要となる可能性を示唆されました(必要かどうかはまだ確定していない)。
売主との話の進め方についてあれこれ悩む
弁護士やその他専門家にいろいろと相談をしました。結果、私自身で売主と話をつけていく方針としました。ただ、地盤改良工事の要否がまだわかっておらず、そこが曖昧だと費用負担の調整もややこしくなると思い、要否の結果がでるまでは売主への連絡をしないでおきました。ですが、契約不適合責任を追求できる期限が近い場合は、すぐにでも埋設物が発見されたことを売主へ通知すべきだと思います。
ハウスメーカーの施工担当者より井戸が見つかったことで地盤改良工事が必要になったとの連絡を受ける
案の定、地盤改良工事が必要との判断が下されました。工事不要と言われたほうが地盤的なところでは不安かなと思っていたので、結果良かったと思います。ちなみに費用の見積もりはこの時点でもらっていませんが、部分改良で済むようで、高額にはならなさそうとのことでした。
売主へ井戸が見つかったことと費用負担してほしい旨を電話連絡
売主への最初のコンタクトは電話で行うことにしました。土地の契約時に売主の連絡先はもらっていたので、そこに連絡しました。埋設物が見つかったことと、撤去及び地盤改良にかかる費用を負担してほしい旨を伝えると、まずは現地を確認させてほしいとのことで、日程調整だけして話は終わりました。
売主と私で現地確認
待ち合わせの時間に現地に到着すると、売主はすでに井戸の確認を終えていました。軽く挨拶を済ませた後は、現地での立ち話になりますが、今後の進め方について相談しました。井戸の撤去(埋戻し)と地盤改良に必要な費用を負担してほしいことを伝えると、それについてはすんなり了承してもらえました。で、それらの工事について、施主側のハウスメーカーから業者に発注して、かかった費用のみ負担いただきたいと伝えたところ、契約書上は売主側で工事の手配をすることになっていると言われました。悪質な業者に多額な工事費用を請求される可能性があるためです。ただ、私が契約したハウスメーカーがその地域で最も施工実績が多く、金勘定においても信頼できるということで、売主も納得してこちらの要求をのんでくれました。最後に、施工担当者に連絡したいので連絡先を教えて欲しいと言われました。私から施工担当者に了承貰ってからお伝えしますということで、現地での話は終わりました。当日の夜、合意した内容を議事録的な感じで私から売主へメールにて送付しました。
井戸撤去のお祓い(井戸埋清祓)
施工担当者からの勧めもあり、お祓いをしておくことにしました。お祓いは当然現地で行うわけですが、必要なものを私が準備するのも手間なので、全部まとめてやってくれる神社にお願いしました。初穂料は35,000円でした。
売主よりハウスメーカーの施工担当者へ電話連絡
施工担当者からは売主との電話連絡について了承をもらい、売主に施工担当者の電話番号を伝えました。その後、両者で会話したようです。売主は今後の工事の日程を確認し、現地立会するとのことでした。工事が確実に実施されたことを確認するためです。施主が工事費用だけもらって工事しない、なんてことがたまにあるのでしょうか。
ハウスメーカーの施工担当者より井戸撤去と地盤改良工事の見積もりを入手+売主へ連絡
施工担当者より、井戸撤去が10万円弱、地盤改良工事が30万円弱という見積もり書が送られてきましたので、スキャンしてPDFにし、売主へメールで送付しておきました。
井戸の撤去工事実施と売主による現地確認
井戸の撤去が実施されました。山砂で埋め戻されたようです。また、塩ビパイプのようなもので、息抜きがされています。
息抜きは、井戸の神様が息をするためとか井戸の中の湿気を逃がすためとか様々理由があるようですが、やならくても実害はないようです。
私は工事の立ち会いはしませんでしが、売主は立ち会いしたようで、当日無事工事が終わったと連絡がありました。
地盤改良工事実施と売主による現地確認
井戸撤去から1週間後、地盤改良工事が行われました。表層改良工事で、井戸周辺の部分的な改良だったようです。
井戸のガラが置かれています。
この日も私は立ち会いませんでした。
売主より現地確認完了した旨の連絡を受ける
地盤改良工事の翌日、売主からは「今回の一連の工事が完了したことを確認した」との連絡を受けました。売主は工事の立ち会いと、現地の写真撮影を行ったと思われます。
売主より費用の振込先情報を教えて欲しいとの連絡を受ける
見積書に記載の費用を振り込むので、振込先と期限を教えて欲しいとの連絡を受けました。費用については今すぐ欲しいわけではありませんでしたが、あまり先の期限を指定すると有耶無耶にされかねないなと思い、2週間後くらいを目安に振り込んでほしいと伝えました。
売主より費用が振り込まれる
振込先を通知した1週間後に、無事費用全額が振り込まれました。これで一件落着、でしょうか。大きな費用負担を強いられることはありませんでしたが、メリットは一つもないような話ですので、ようやく終わったかっていう感じです。
最後に
ネットにあまり書かれていない土地探しの注意点をまとめてみました。土地購入後の思わぬ出費やトラブルを避けるためにも、こういった観点で土地探しをしてみてはいかがでしょうか。